機関車トーマスと最高難度の転調
こんにちは!講師の黒田です。
先日のこと、「簡単で、誰でも知っているようなテーマソングないかな」とYouTubeで有名曲をぼーっと探していました。
動画を開き、しばらく聴いて閉じて次を探すを何回か繰り返し、ついに問題の曲に。
「機関車トーマスのテーマ」
開始10秒でその「異変」に気がつく…。
という事で、今回は「転調」のお話です。
曲を聴いていると、途中でガラッと雰囲気が変わる時がありますよね。
その瞬間、音楽理論では「転調」と呼ばれるテクニックが使用されています。
ピアノのド、ド♯、レ…と数えたら次の高いドまでに12種類の音があります。
曲というものは、この12種類の音のうち「7つ」の音を選び、その中で作られています。
曲の途中で「違う組み合わせの7つの音を使用されたメロディーライン(コードの場合もあるけど説明が大変なので…)」が登場した時。
この状況を「転調」と呼びます。
※一瞬だけ転調の場合などは「モーダルインターチェンジ」と名前が変わります。
今までに聴いてきた音とは違う音が鳴るので、雰囲気が変わり「アクセント」となり”惹かれるサウンド”となるのです。
大抵は7つ音のうち、ひとつだけ変わったりする「お隣さん」的な転調が多かったりします。
後は最後のサビで「7音全てが半音上がる」ような転調も多いです。
ガラリと変わって気分高揚。盛り上げるならコレです。
ただ、弾き語りギタリストにとっては奏法の観点からあまりしたくない転調…。
さて、話はトーマスのテーマに戻ってきます。
このトーマスのテーマ。何が度肝を抜かれるかと言いますと
かなり「珍しい転調」です。
専門用語でいうところの「長三度下がる転調」なのですが、これが世の中にほとんど無いです。
元のKeyの音楽的な世界観を「変えすぎ」ます。
トーマスのテーマも転調と同時に一気に不安な気持ちにさせます。
非常に使いにくい転調です。
ですが、この長三度転調。数学的にはかなり面白い転調なのです。
ちょっと難しい話です。
KeyCから長三度下がるとKeyA♭に
そして“もう一度転調“させてみます。
KeyA♭から長三度下がるとKeyE
さらに“もう一度転調”させると…
KeyEから長三度下がるとKeyC
なんと最初のKeyCに戻ってきました。
この「同じ距離でKeyが変わり、Keyが一周する」という事がなかなか凄いのですが…
もう少しイメージをし易くします。
Keyは「音」と同じように12種類できます。
同じ「12」という数を持つ「時計」に置き換えてみましょう。
てっぺん12時はKeyC
4時をA♭
8時をE
と置き換えると、少しその「特殊な感じ」が見えてくるのではないでしょうか。
どれも間にある時間は20分。それぞれの角度は120°。時計の見た目的にも数字的も美しい(?)気分にさせてくれます。
反時計回りでも同じ20分を刻めば一周します。
この、同じ距離で一周する性質を利用した最高難度のジャズスタンダードが「giant steps」です。アドリブ難しいです…。
「同じ時間を刻み続ける事で一周できる」が特別なら30分や10分、15分の距離は?と思えます。
10分、15分の転調も面白いですが、この時間(距離)の転調はそこそこ使われていたりします。まだ音楽的な世界観は近いです。
20分の転調は現実的に使える転調の中で一番キツいものになります。
30分はポップスでは不可能です。作曲での使用を検討されている方はとりあえず諦めて聴きやすい曲を作りましょう…。
ちなみに遠そうな25分は?
そう。かなり遠いのですが最初に例に挙げた転調でよく使われてます。半音変わる転調です。
それに数学的には特別感薄いです。
この20分転調、さらにトーマスと同じ時計周りな転調をする有名曲は
他には見つかりませんでした!
逆回りならいくつか…頑張りましたが本当に全然見つけられません…。
ウィンターワンダーランド
Bメロで転調。ガラリと雰囲気変化
butterfly 木村カエラ
サビで転調。この転調がさらりと歌えた時点で相当歌うまですよ。
パプリカ 米津玄師
サビで転調。なんでこんなヘンテコで難しい転調が五輪ソングになってしまったのか⁉︎
YouTubeで検索してみてください!
Giant Steps ジョンコルトレーン
あまりに難しく、革新的すぎた難曲。ちなみにコレは時計回りな転調。コルトレーンは満足なソロができたようですが、ピアノのトミーフラナガンは途中からソロが。聴いてるだけで胸が痛いです。これを音源化してしまうのね。
トミーフラナガンはその後、完璧に弾いた演奏を売り出してます。
そっちを聞きましょう!
時計はあくまでもイメージ。専門用語では無いので要注意です。